COLUMN
毎月3万円も積み立てできない時代がくる?

「毎月3万円くらいなら、いつでも始められる」。本当にそうでしょうか。
物価や家賃が上がる。教育費や社会保険料の負担が増える。収入が増えても、それ以上に生活費が増えれば、家計に残るお金は少なくなります。
今は積み立てられる3万円が、将来も積み立てられるとは限りません。
格差は、年収だけで生まれるのではない
これから広がる可能性があるのは、単なる年収の差ではありません。「すでに資産を持っている人」と、「生活費だけで収入がなくなる人」の差です。
資産がある人は、その資産から利益を得る機会を持てます。利益を再び投資すれば、資産が次の資産を生むこともあります。ただし、利益が保証されるわけではなく、損失が出ることもあります。
一方、生活費で収入を使い切る人は、投資を始める元手をつくるのが難しくなります。
物価が上がれば、さらに余裕がなくなる。余裕がないから、投資できない。投資できないから、資産所得を得る機会も持ちにくい。この循環に入ると、後から抜け出すことは簡単ではありません。
香港の金融都市としての姿から、考えたいこと
日本から近い国際金融都市、香港。香港政府は2026年5月、ボストン・コンサルティング・グループの「Global Wealth Report 2026」に基づき、香港が世界最大のクロスボーダー資産管理センターになったと発表しました。
この事例から考えたいのは、金融都市の規模そのものではありません。世界には、働いて収入を得るだけでなく、持っている資産を運用し、そこから収入を得る仕組みがあるということです。
給与などの労働所得は、暮らしを支える大切な土台です。ただ、収入を働くことだけに頼っていると、病気や介護、退職などで働く時間が減ったときに、家計への影響が大きくなることがあります。
そこで、労働所得に加えて、預金や債券の利子、株式の配当、不動産の賃料など、資産から得られる収入も少しずつ育てていく。収入源を増やすことは、将来の暮らしを支える備えの一つになります。
自分が働いて得る収入に、
資産から得る収入を加えていく。
もちろん、配当や賃料は保証されず、資産の値下がりや維持費などもあります。大切なのは、無理に投資を始めることではなく、生活を守る備えを確保したうえで、自分に合った方法で資産を育てることです。
働き続けなければ暮らせない状態から、働き方や時間の使い方を自分で選べる状態へ。その選択肢を増やすために、労働所得だけでなく、金融所得・資産所得にも目を向けていきたいと考えています。
「労働は投資に勝てない」の本当の意味
経済学者トマ・ピケティは『21世紀の資本』で、「r>g」という関係に注目しました。rは資本から得られる収益率、gは経済全体の成長率です。
資本から得られる収益率が経済成長率を上回る状態は、富が集中する一因になり得る、という考え方です。ただし、格差の動きには税制や貯蓄、相続なども関わり、「r>g」だけで決まるわけではありません。
これは「会社員は絶対に豊かになれない」という意味ではありません。投資をすれば必ず成功する、という意味でもありません。また、個人の賃金の伸びと投資のリターンを直接比較した式でもありません。
私たちの暮らしに引きつけて考えるなら、労働収入を大切にしながら、無理のない範囲で資産を育て、収入源の選択肢を増やす視点を持つ。そのきっかけにしたいと考えています。
始めるなら、余裕がある今
今なら、毎月3万円を積み立てられるかもしれません。しかし、家族が増えたら。住宅費が上がったら。親の介護が始まったら。物価がさらに上がったら。同じ3万円を用意することが、難しくなる可能性があります。
だからといって、生活を削って無理に投資をするべきではありません。生活防衛資金がないまま投資を始めれば、急な出費で値下がり中の資産を売ることになりかねません。
大切なのは、金額の大きさではありません。3万円が難しければ、1万円でも5,000円でもいい。まずは預貯金で備えをつくることも含め、生活を守りながら、少しずつ資産を育てていくことです。
次の世代に何を残すのか
資産形成は、自分だけの問題ではありません。親に資産があり、お金の知識もある家庭。何もない状態から、子ども自身が学ばなければならない家庭。スタート地点の差は、次の世代にも影響します。
だからこそ、今を生きる私たちにできることがあります。残すのは、大きな財産でなくても構いません。
- 少しの資産
- お金について話せる家庭
- 長く積み立てる習慣
- 怪しい話を見抜く知識
これらも、子どもや孫へ残せる立派な財産です。
これから本当に「頑張っても3万円を積み立てられない時代」が来るかは、分かりません。しかし、そうなってからでは、選択肢が少なくなります。
未来を恐れて投資をするのではありません。未来を自分で選ぶために、余裕がある今から準備を始めるのです。
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